フクシマ板長
また、「馬刺しはなぜ熊本が発祥なのか?」という疑問を持ったことがある方も多くいらっしゃると思います。
今回はそんな疑問にお答えしつつ、馬刺しの歴史を深く掘り下げてみたいと思います。
目次
馬刺し発祥の歴史
馬刺しの起源には複数の説がありますが、最も有名なのは約400年前、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての武将・大名で、熊本藩の初代藩主、加藤清正にまつわる話です。
加藤清正が朝鮮出兵の際、食料が底をついたため、仕方なく軍馬を食べたところ、その味の良さに驚いたと言われています。
帰国後も彼が馬刺しや馬肉を好んで食べたことで、領地である熊本で馬刺しを食べる文化が根付き、全国へと広まったとされています。
清正公/浄池院殿永運日乗大居士肖像 出典:Wikipedia
江戸時代まで日本では肉食の習慣がほとんどありませんでしたが、明治時代に入ると西洋文化の影響で肉食が広まり始めます。
特に、馬肉は熊本や阿蘇地域でよく食べられるようになりました。その後第二次世界大戦後の食糧難の中で、人々は生き延びるために馬肉を食べ、その風習が一般に広まったのです。
昭和30年代には、馬刺しは飲食店でも利用されるようになりました。
馬肉の生産ランキングトップ10
馬肉が熊本で愛されるようにになったのは、400年以上も前の歴史が関係していることがわかりましたが、現在ではどうなのでしょうか。
全国の馬肉生産ランキングを見ていきたいと思います。
- 熊本県 1997.8t
- 福島県 858.9t
- 福岡県 518.8t
- 青森県 510t
- 山梨県 222.1t
- 山形県 119.9t
- 秋田県 97.5t
- 岐阜県 56.8t
- 高知県 52t
- 北海道 31.2t
出典:農林水産省「畜産物流通調査」
※馬肉の生産量のデータは2021年のものです
やはり熊本県がダントツの1位!地域で言うと、熊本県や福岡県の九州地方と福島県や青森県の東北地方での生産が盛んです。 トップ3の県の特徴をご紹介します。
第1位:熊本県
熊本県は、馬肉生産量で日本一を誇り、全体の約43.9%を占めています。
熊本県で育てられる馬の多くはカナダや北海道で生まれた馬であり、地元で生まれた馬は意外と少ないという特徴があります。
第2位:福島県
馬肉生産量第2位の福島県は、全体の約18.9%を占めています。
福島県の馬肉文化は、戊辰戦争の際に負傷者に馬肉を食べさせたことから始まりました。特に会津若松を中心に、この地域固有の食文化として根付いていきました。
現在では、福島県は日本三大馬刺しの一つとして知られ、長い歴史を持つ馬肉文化を持っています。
第3位:福岡県
福岡県は、馬肉生産量で第3位となっており、全体の約11.4%を占めています。
一般的には馬肉と言えば熊本県のイメージが強いかもしれませんが、同じ九州の福岡県でも盛んに馬肉が生産されています。
福岡県の馬肉生産量は常に3位というわけではなく、青森県と順位を争うことが多いです。福岡では馬肉がふるさと納税の返礼品としても馬肉が用意されていることから、地域の特産品としての価値も高まっています。
馬肉の産地による違い
馬肉の産地による違いは、肉質や食感、さらにはその地域固有の食文化等によって異なります。
ここでは、熊本県産、福島県産、カナダ産、そしてアルゼンチン産の馬肉について、それぞれの特徴をより詳しく掘り下げてみましょう。
熊本県産の馬肉
熊本県で生産される馬肉は、「重種馬」と呼ばれる体重800kg~1トン以上に育つ馬が特徴です。これらの馬には特別な配合飼料が与えられ、大きく育てられます。
このため、サシ(霜降り)が入りやすく、牛肉のような美味しい霜降り肉となります。熊本県産の馬肉は、そのとろけるような柔らかさとジューシーな肉汁、濃厚な甘みが特徴で、馬刺しとして食べられる際には、生姜やにんにくなどの薬味と共に食べることが多いです。
福島県産の馬肉
福島県で主に飼育されるのは「軽種馬」と呼ばれる体重600kg前後の競走馬やサラブレットとしても有名な馬になります。
これらの馬から得られる肉は、サシが少なくあっさりとした赤身が特徴です。福島県では、馬刺しに辛味噌や醤油を合わせる食べ方が一般的で、あっさりとした馬肉に、こってりとした辛味噌がよく合います。
カナダ産の馬肉
カナダで生産される馬肉の大部分は、政府認定のBouvry社で飼育されています。これらの馬はアルバータ州の広大な敷地で、特許製法の飼料を与えられながら飼育されています。
カナダ産の馬肉は、食品衛生管理の国際標準であるHACCPを基準に加工されており、特に衛生面での安全性が高く評価されています。
カナダ産の馬肉は、温屠体カットによって解体され、その後日本に空輸されます。これにより、日本人の好みに合わせた味わい深い馬肉が提供されています。
アルゼンチン産の馬肉
アルゼンチンで飼育される馬は、在来種系の馬が主で、放し飼いに近い形で育てられています。これらの馬は、穀物だけでなく牧草や野草を含むバランスの良い飼料を食べており、健康的で生命力の強い馬となっています。
アルゼンチン産の馬肉は、余分な脂肪がなく引き締まっているため、あっさりとした赤身が特徴です。サシが少ないため、「地鶏のような味わい」とも表現され、馬肉特有の苦手意識を持っている方でも楽しめるさっぱりとした味わいが魅力です。
これらの産地ごとの違いを知ることで、自分の好みに合った馬肉を選ぶことができます。
また、それぞれの産地が持つ独自の食文化や歴史を知ることで、馬肉をより深く楽しむことができるでしょう。
メキシコ産の馬肉
牛肉の価格高騰から安価な馬肉の需要が拡大、それによって馬の解体処理業者が増えたことにより日本への輸出量も多くなっています。
メキシコ産の馬肉の最大の特徴は、その品質の高さにあります。アメリカの食品医薬品局(FDA)の厳しい衛生基準をクリアしており、輸出の際には健康証明書が発行されるなど、国産馬肉と比較しても遜色ないほどの管理がされています。
手頃な価格でありながら、安全で美味しい馬肉なのが特徴です。
まとめ
馬刺しは、その歴史が示すように、日本の食文化の中でも特に熊本県に深く根ざした伝統料理です。
熊本県や福島県はもちろん、カナダ産、アルゼンチン産、メキシコ産など国外の産地も、それぞれに特色があります。
この記事で紹介した知識をもとに、馬刺しのさまざまな味わいを探求し、新しい美味しさを見つけてください。