フクシマ板長
目次
馬刺しのはじまり
馬刺しは九州熊本の郷土料理として知られていますが、その歴史は肥後熊本初代藩主・加藤清正によって始まったと言われています。加藤清正が朝鮮出兵の際、食料が底をついたため、仕方なく軍馬を食べたところ、その味の良さに驚き、帰国後も彼が馬刺しや馬肉を好んで食べたことで、領地である熊本で馬刺しを食べる文化が根付き、全国へと広まったとされています。
清正公/浄池院殿永運日乗大居士肖像 出典:Wikipedia
江戸時代まで日本では肉食の習慣がほとんどありませんでしたが、明治時代に入ると西洋文化の影響で肉食が広まり始めます。
特に、馬肉は熊本や阿蘇地域でよく食べられるようになりました。その後第二次世界大戦後の食糧難の中で、人々は生き延びるために馬肉を食べ、その風習が一般に広まったのです。
昭和30年代には、馬刺しは飲食店でも利用されるようになりました。
霜降り馬刺しの特徴
霜降りとは、白い脂肪が赤い筋肉の間に網目状に入っている状態を指します。このサシが細かいほど、脂がのった美味しい肉とされています。
霜降りは焼肉やすき焼き用のお肉としてもよく合いますが、おすすめはやっぱり生で食べること。霜降り馬肉は、甘みがあり、コクがある一方でさっぱりしていることが特徴です。脂は口の中で溶け出し、肉のコクと一体となって旨味に変わります。
そんな魅力満点の霜降りについて、詳しく解説をしていきます。
霜降りは馬のどのへんの部位?
霜降り馬肉は、馬の腹側バラ、肩ロース、背中のロースなど、複数の部位から採取されます。これらの部位では、脂肪の入り方、いわゆるサシのパターンがそれぞれ異なります。
特に、下腹部のバラ肉からは脂肪分が豊富な「大トロ」、腹部中央のバラからは適度な脂肪が特徴の「中トロ」が取れます。これらは馬一頭から少量しか取れない非常に希少な部位であり、馬肉の産地や育て方によっても、その脂肪の入り具合は大きく変わります。
■大トロ
■中トロ
霜降り馬刺しはどんな味?
霜降りのお肉は脂の甘みが強く・深いのが特徴です。「霜降り」と聞くと、脂身が多くこってりしていてくどいイメージを持たれがちですが、馬肉の脂身はベタっとしておらず、人間の体温でトロ~っととろけるのでしつこくありません。別名、「馬肉のトロ」ともいわれるほどです。
体温で瞬時に溶けて、口の中に脂が残らないため、後味は非常にさっぱりしています。肉と脂の網目状の構成が、赤身に比べてその柔らかさを際立たせています。
一部には、馬肉や馬刺しは牛肉や豚肉と比べて臭みが強いのではないかと敬遠する声もありますが、実際には食用として肥育された馬肉は獣臭さがほとんど感じられず、牛肉や豚肉よりも食べやすいと評価する女性も多いです。生食しても臭みはほとんど感じません。
さらに、馬肉の魅力の一つがその見た目です。切り分けるときれいなピンク色をしており、この色合いから「桜肉」とも称されます。霜降りの白い脂肪と桜色の肉が織りなす模様は、食卓を一層華やかに彩ります。
霜降り馬刺しの魅力は、その豊かな味わいととろけるような食感にあります。特に中トロは、赤身と霜降りのバランスが絶妙で、脂が苦手な方でも楽しめます。
馬刺しは甘口の醤油とニンニクや生姜を添えて食べるのが一般的ですが、霜降り肉の場合、オニオンスライスを一緒に食べることで、味のアクセントになります。
気になる霜降りのカロリー
霜降り肉を食べる際、脂肪の多さからカロリーが気になることはありますが、馬肉は牛肉と比較して全体的に脂肪が少なく、低カロリーなのが特徴です。
さらに、リノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸を豊富に含んでおり、これらの成分はコレステロール値の低下に役立つ効果があります。
また、馬肉はタンパク質や鉄分、カルシウムといった栄養素も豊富に含まれているため、美味しい上に健康にもいい食材です。
熊本の馬刺しはサシ(霜降り)が特徴!?
馬刺しといえばやはり熊本ですが、熊本の馬刺しは「重種馬」と呼ばれる品種から取れる肉が用いられます。重種馬は体重が800kgから1tにもなる大型の馬で、その大きな体から取れる肉はサシ(脂肪の筋)が入りやすい性質を持っています。このため、熊本の馬刺しは、サシの多さが大きな特徴となっており、とろけるような食感を楽しむことができます。
一方、体重が約600kg前後のサラブレッドやアラブ種などの「軽種馬」から取れる肉は、サシが少なめで赤身が特徴です。馬肉生産量で熊本に次ぐ第2位の福島県会津では、この軽種馬の肉を使用した馬刺しが一般的です。会津の馬刺しは、あっさりとした味わいが特徴で、馬刺し愛好家には別の魅力として評価されています。
熊本の馬刺しはサシが豊富でとろける口当たりが魅力的であり、会津の馬刺しはサシが少なくあっさりとした食感が楽しめます。どちらが好みかは人それぞれ異なりますが、両方の馬刺しを食べ比べることで、それぞれの独特な風味と魅力を発見する楽しみがあります。
馬脂肪注入冷凍馬刺しとその特徴
霜降り馬刺しは、1頭の馬からは限られた量しか取れないため、希少性が高く価格も高額になりがちです。このような状況を踏まえ、もっと気軽に霜降りの馬刺しを楽しむ方法として、馬脂肪注入冷凍馬刺しが開発されました。
この製法では、もともと霜降りではない赤身の部分に、加熱して液状にした馬の脂肪を注射針のような器具を使って注入します。この処理により、赤身肉に霜降り肉特有の白い脂肪が網目状に分布するようになり、見た目が天然の霜降り肉と似た模様を呈するようになります。
馬脂肪注入による処理を施した馬刺しは、食感や味わいが天然の霜降り馬刺しに近くはなりますが、「馬脂肪注入馬刺し」の表示が義務付けられています。
購入時にはその区別を知っておくことも大切です。通販などで馬刺しを購入する際には、製品が天然の霜降り肉であるか、馬脂肪注入されたものであるかを確認し、自分の好みに合った選択をしましょう。
霜降り馬刺しの食べ方
馬たらしの馬刺しは、5分以内で食べれる冷凍のスライスでお届けしています。
調理の際は、以下の手順で解凍〜盛り付けを行うだけで完成です!
レバ刺し、ハツ、バラひもなど、お肉が重なり合っている商品は、5分程度の解凍時間をお勧めします。
スライス済みなので、解凍と盛り付けだけで、専門店の味わいを再現できます。お好みの薬味を加えることで、さらに美味しさが引き立ちます。
ショート動画でも解説をしておりますので、よろしければこちらもぜひご視聴ください。
フクシマ板長
スライス馬刺しの美味しい食べ方を動画で解説
まとめ
今回ご紹介した霜降り馬刺しは、馬肉らしさをもっとも堪能できる部分かもしれません。コクと上品な味わい、そしてとろける舌触りは、馬刺しの愛好家はもちろん、初めて馬刺しを食べる方にもおすすめです!
約400年前にはじまった馬肉文化。現在日本各地で馬刺しが食べられるようになってるのは、時代を超えた普遍的なおいしさであることには間違いなさそうです。