フクシマ板長
今回は、馬肉は愛犬に食べさせても本当に大丈夫なのか?そして馬肉の栄養素や愛犬に与えることによって期待できる驚くべきメリットや、犬種や年齢による適切な量、さらには与えるときの注意点などを解説していきます。
目次
馬肉の安全性
まず結論から申し上げると、馬肉は犬にとって安全な食材です。馬肉を使用したドッグフードやジャーキーが多数販売されていることからも、その安全性がうかがえます。
馬肉がなぜ安全なのかというと、馬は牛や豚などの家畜と比較して体温が5〜6℃高いため、寄生虫や雑菌が寄り付きにくい特性があります。特に、O-157などの菌は反芻動物の腸内に生息しますが、馬は反芻しないためこれらの菌が腸内に生息していないとされています。
これにより、馬肉は生食にも適していると考えられます。また、馬は非常にデリケートな動物であり、抗菌剤やホルモン剤の投与を行わずに育てられるため、化学物質の汚染にさらされることが少ないです。このため、馬肉は野生の鹿肉と並んで極めて安全な食肉とされています。
さらに、馬肉はアレルギーを引き起こしにくい食肉とも言われており、畜肉(牛、豚、鶏)にアレルギーがある犬にも適しています。
馬刺しに食中毒の心配はないの?食べる際の注意点を解説馬肉のドッグフードとしてのはじまり
馬肉がドッグフードとして食べられるようになった歴史は、1920年代のアメリカに遡ります。当時、食肉加工業者たちは余った馬肉を利用する方法を模索していました。
馬肉は他の肉に比べて安価で大量に入手可能であったため、これがドッグフードの主なタンパク源として利用されることになりました。
1922年、チャペル兄弟は馬肉を使用した初の缶詰ドッグフード「Ken-L Ration」を開発しました。この製品は大ヒットし、1930年代には、チャペル社はドッグフード用に馬を特別に飼育するほどの需要を生み出しました。
しかし、第二次世界大戦中にアメリカ政府が缶詰と肉の配給を制限したため、缶詰ドッグフードの人気は一時的に低迷しました。戦後、ドッグフード市場は多様化し、馬肉は徐々に他の肉類に置き換えられました。現在では、アメリカで馬肉をドッグフードに使用することはあまりなく、主に他の肉類(鶏肉、牛肉、豚肉など)が利用されています。
馬肉を愛犬に食べさせるメリット
馬肉は高たんぱく、低カロリーで、カロリ-は100gあたり110kcalと牛や豚のおよそ3分の1、脂肪分はおよそ5分の1です。
また、馬肉に含まれるアミノ酸や鉄分、亜鉛の量は他の肉類よりも豊富で、これらはすべて健康維持に欠かせない栄養素です。そのため、愛犬の健康を維持し、長寿を目指すためには、積極的に取り入れたい食材です。
それでは馬肉に含まれる栄養素について、詳しく解説していきます。
タンパク質
馬肉には、臓器や血液、被毛、皮膚などの体の構成要素となるタンパク質が豊富に含まれています。馬肉のタンパク質は、馬肉100gに20.1gと豊富に含まれており、他のお肉と同程度の量を含んでいます。それに加えて低カロリー、低脂質であることが特徴で、ダイエットが必要な場合や、代謝の低下した高齢犬の肥満予防にも適しています。
不飽和脂肪酸
馬肉には、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸、オメガ6脂肪酸のリノール酸、オメガ9脂肪酸のオレイン酸といった必須脂肪酸が含まれています。これらの脂肪酸は、コレステロール値を下げて血液の流れを良くし、血管を丈夫にする効果があります。また、動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞のリスク軽減にも寄与します。
カリウム
カリウムは、過剰なナトリウムを排出して血圧の安定やむくみの解消に効果があります。さらに、神経刺激の伝達やエネルギー代謝においても重要な役割を果たしており、心機能にも欠かせない栄養素です。
鉄分と亜鉛
馬肉には鉄分と亜鉛が豊富に含まれています。これらのミネラルは血液の健康を保つために重要です。鉄分は赤血球の生成を助け、酸素の運搬能力を向上させます。亜鉛は免疫機能の向上に寄与し、皮膚や皮毛の健康をサポートします
ビタミンB群
馬肉にはビタミンB群(特にビタミンB12、B3、B6)が含まれています。ビタミンB群はエネルギー代謝に重要であり、神経機能をサポートします。特にビタミンB12は赤血球の生成に関与し、神経細胞の維持に役立ちます。
カルシウム
馬肉には、骨や歯の健康な成長と維持に欠かせないカルシウムが豊富に含まれています。牛肉や豚肉の約3倍の量が含まれており、神経の興奮を抑える効果もあります。
愛犬に与えてよい馬肉の量
適切な量は犬の大きさや年齢によって異なります。以下は目安になります。
小型犬 | 中型犬 | 大型犬 | 子犬や老犬 | |
---|---|---|---|---|
主食の材料として | 150gまで | 250gまで | 500gまで | 少量ずつ |
おやつやトッピングとして | 30gまで | 50gまで | 100gまで | 少量ずつ |
馬肉を与える際の注意点
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いきなり生で大量に与えない
馬は牛や豚に比べて体温が4〜5℃程度高く、馬肉はO157やサルモネラ属菌などの大腸菌が検出されにくいですが、寄生虫「ザルコシスティス・フェアリー」が存在する可能性があります。冷凍処理することでこの寄生虫は死滅するため、冷凍処理された馬肉を加熱してから与えるようにしましょう。
また、愛犬に初めて生肉を与える場合、いきなり生で大量に与えると、下痢や嘔吐など消化不良の症状を呈する場合があります。最初はボイルで少量を、様子を見ながら徐々に量を増やし、生食に近づけていくようにしましょう。
体質に合わない場合がある
馬肉は低アレルゲンですが、稀にアレルギー反応を起こす犬もいます。初めて与えるときは少量から始め、愛犬の様子を観察しましょう。下痢や嘔吐、目の充血、皮膚を掻くなどの症状が見られた場合は、すぐに与えるのをやめて動物病院を受診してください。
馬肉だけを与えすぎない
犬にとって馬肉は嗜好性が高い食事なので、気に入ってしまうと馬肉しか食べなくなってしまうかもしれません。
先述の通り、馬肉は栄養素が豊富な食材ではあるものの、犬に必要な栄養素のすべてが含まれているわけではありません。馬肉しか食べないと栄養が偏ってしまう可能性があります。
先述した目安の量を参考していただきながら、魚や野菜、骨などと一緒に与えてバランスを整えるか、総合栄養食のドッグフードと一緒に与えるようにしましょう。
馬肉を与えてはいけないケース
馬肉は基本的には安全ですが、持病のある愛犬に与える前に必ず獣医師に相談しましょう。特に腎臓や肝臓に問題がある場合は注意が必要です。なぜなら腎臓病の犬の食事ではタンパク質を制限する必要があり、高タンパクな馬肉は尿毒症を引き起こす要因となるため相性は良くありません。食いつきを良くするために与える場合でも、ごく少量に留める必要があります。
まとめ
馬肉は愛犬に与えても安心・安全な食材であり、健康維持のために積極的に取り入れたい食材です。生での与えすぎ等、今回ご紹介した注意点にご留意いただきながら、ぜひ愛犬と幸せな毎日を送るためにも、馬肉を取り入れてみてはいかがでしょうか。